麻雀な日々(3)

麻雀な日々(3)
麻雀屋で働く知り合いの話をまとめてます。
彼が、中卒にして麻雀屋の従業員として、オーナーにスカウトされた歴史を振り返ってみると、あの出逢いは、必然的であったのかなぁと最近感じているそうです。日々、雀荘に訪れる、お客さんたちとの日々は、彼の人生には不可欠なものとなりつつあるとか。
スーパー銭湯のサウナで居眠りをしていたオーナーは、彼が、声を掛けると、寝起きとともに慌てて走りさって行き、涼しい更衣室で冷たい牛乳を美味しそうに飲んでいたそうです。そんなオーナーに、軽く会釈をすると、オーナーはニッコリ微笑んで、「先程は、ありがとう。命拾いをしたよ。このところ、徹夜の店番が続いて、ほとんど毎日、まともに寝てなかったもんでね。お礼に、1本牛乳でも、飲むかい?」と、その場で、彼の返事も聞かずにオーナーは、冷たい瓶の牛乳を自動販売機で買ってくれたそうです。
実は彼も喉が渇いていたので、無駄に遠慮はせずに、お礼を言って受け取りました。「ずいぶん若そうだけれど、良く来るの?こんな昼間っから、学校はお休みかい?」と、オーナーが、不思議そうに質問するので、「高校には行っていないんです。来月から、町工場で働きに出ます」と答えると、「感心だよ。もう一人前なんだね。親御さんも喜ぶだろうよ」と、彼の背中をバンバン叩いて、更衣室を出ていってしまったそうです。オーナーに背中をおもいっきり叩かれた彼は、飲んでいた牛乳をむせ返しましたが、そんな苦しそうな彼などに目もくれず、オーナーは更衣室から出ていってしまったようです。
息を整えて牛乳を飲みほし、更衣室を出る準備をしていると、更衣室の洗面台の前に、黒いセカンドバッグが置きっぱなしになっている事に気が付きました。そういえば、先ほど、彼に牛乳を買ってくれた時に、オーナーがこのセカンドバッグから財布を出しているのを思い出した彼は、慌てて更衣室を飛び出し、スーパー銭湯の出入り口まで走り出していました。